「いつもの」~3~
窓を見たら雨が降った。急な雨。内容の入ってこない一般教養の科目を横目にぼうっとした。
洗濯物がなぁ。
ただそれだけ。それだけだが十二分に僕を憂鬱にさせた。しかし授業は憂鬱な気持ちを晴らすことも無く進んでいく。仕方なくノートを開くがペンを持つ気にはならなかった。
授業が終わり、ぞろぞろと人の波は廊下へ流れていく。取り残された砂粒のようにぽつんと教室に居残った僕は遅めの昼食を取っていた。今日はあと1コマ。先程の波は食堂へと流れ着く訳だが僕は静かにその場で漂う。至福の時間だ。するともうひとつ粒が流れてきた。
「やっ!今日も1人かい?」
騒がしいのが来た。彼女もまた僕と同じ側の人間だ。しかし僕とは正反対に底抜けに明るい。知り合いも多い彼女がこちら側の人間だとは傍から見たら分からないだろう。
「やれやれ、相変わらず貧相な食事だねぇ」
「お前に言われたくはない」
「今日はもう終わりかな?」
「いや、あとひとつ」
途端に彼女の顔が悪い顔になった。
「そうかそうか、私はもう帰るぞ」
予想的中。嫌味だ。この週は毎回のようにやられるが彼女も僕もこのやり取りを飽きずにしている物好きだ。
「…ねえ。聞いてる?」
「ん?あぁごめん意識飛んでた」
「おい〜」
ぼうっとするのは今日で何回目だろう。いつもか。
「この後の授業は蹴ってもいいやつなの?」
「は?…いやまぁ今のところは」
「じゃあ一緒に帰ろうぜ。ご飯食べよ」
誘い方が男勝りなんだよなぁ。いやそもそも僕は今食べたばかりなんだが。
とか思いつつも僕はノートと筆箱を鞄に入れた。